薬物による肝障害:薬剤が原因で肝臓を悪くするケースも
- 肝臓病の種類と原因と治療法
薬物による肝障害:薬剤が原因で肝臓を悪くするケースも
薬を飲んだことによって、肝障害が起こることがあります。そのメカニズムには主として2通りありますが、多くは服用した薬のアレルギーによるものです。
治療のための薬が肝障害を起こすことがある
薬剤は病気を治すために飲むものですが、ときにその薬剤が原因で肝臓(カンゾウ)に障害を起こすことがあります。これを「薬物性肝障害(ヤクブツセイ・カンショウガイ)」と言います。薬剤による肝障害の多くは、肝細胞がダメージを受けて起こりますが、薬剤の種類によっても違います。
ある種の薬剤は、肝細胞にほとんど障害を与えずに胆管系のみに障害を与え、胆汁(タンジュウ)のうっ滞(血流などが静脈内などに停滞した状態)をもたらします。また、ある種の薬剤は、血管系の細胞に障害を与え、血管の閉塞、または線維化をもたらします。さらに、ビタミンA中毒のように、肝臓の線維化を形成することもあります。このように、薬剤というものは、ときには肝臓に毒性を発揮して、さまざまな障害を起こすことがあるのです。
- 【参考】「女性はピルに要注意」に関して
:女性にみられる「薬物性肝障害」に、避妊剤のピルによるものがあります。ピルは女性ホルモン剤で、主として避妊を目的に使われますが、問題となるのはその副作用です。最近のピルはホルモン含有量が大幅に減っているのであまり心配はありませんが、長期間にわたって服用すると、血栓症(血管内の血液が何らかの原因で形成した塊で、本来は止血機能をなす)や肝臓の良性腫瘍を引き起こしやすいことなどが判明しています。ピルの長期間にわたる服用は、可能な限り避けたほうが賢明です。
薬剤の持つ「薬効」と「副作用」の二面性
薬剤が原因で起こる肝障害には様々なものがあります。それは、主に薬の中毒による「中毒性肝障害」とアレルギーによる「アレルギー性肝障害」に分けられます。「中毒性肝障害」は、薬剤そのもの、もしくは肝臓(カンゾウ)で薬剤を処理するときにできた物質が肝臓を傷めつけるためになる病気です。
また、「アレルギー性肝障害」は、肝細胞と結合した薬物成分を体の免疫機構(ウイルスや細菌などが体内に侵入した際に、排除して自分の身体を守ろうとする働き)が異物とみなし、攻撃して肝臓に障害を起こすものです。
近年においては、薬物の副作用が問題になっていることもあり、薬剤の審査は厳しく行われています。そのために、肝障害を起こす危険性(リスク)のあるものは、副作用を承知で使用するケース(抗ガン剤など)を除けば、処方されることはまずありません。ですから、「薬物性肝障害」のほとんどはアレルギーによるものです。しかしながら、薬には「薬効」がある反面、「副作用」もあるのだということを、いつも心に留めておかなければなりません。
体に合わなかった薬は二度と使用しないこと
アレルギーによる「薬物性肝障害」というのは、ある特定の薬剤に対して、ある特定の人にだけ起こるものです。そのために、一度その薬剤を使用してみないと、その薬剤のアレルギーかどうかは知ることはできません。
このような点を勘案すると、薬剤を使用して発熱や発疹(ホッシン)などが現れた場合には、すぐに診察を受けることが重要です。そして、その薬剤が体に合わなかったと判明した場合には、同じ薬剤を二度と使用してはいけません。同じ薬剤でアレルギーを起こすと、二度目は一度目より重症になることがあるので特に気をつけなくてはいけないことを覚えておいてください。
- 【参考】「肝障害を起こしやすい薬物」に関して
:どの薬剤がアレルギーを起こすかは、実際に服用してみないとわかりません。薬剤は、可能性から言えば、どの薬剤もアレルギーの原因となり得るのです。
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