自己免疫による肝障害:患者さんご自身の免疫機能が肝臓病を起こす
- 肝臓病の種類と原因と治療法
自己免疫による肝障害:患者さんご自身の免疫機能が肝臓病を起こす
免疫機構が、何かの原因で自分の体の一部を排除しようと攻撃することがあります。これか自己免疫疾患で、成立すると体内に炎症が起こって病気となります。
自分の体の一部を異物とみなして攻撃する
私たち人間の体は、「免疫機構(ウイルスや細菌などが体内に侵入した際に、排除して自分の身体を守ろうとする働き)」によってウイルスなどの外敵から守られています。当然のことながら、そうした免疫の機能はウイルスなどの外敵にのみ反応し、自分の体を構成している成分(細胞やタンパク質など)には何の反応も示しません。しかしながら、ある特殊な状況下では、その免疫機構に狂いが生じ、生まれつき体内に持っているものを異物として攻撃することがあります。これが「自己免疫疾患」といわれるものです。
自己免疫反応によって起こる病気を「自己免疫性疾患」といいますが、その発生原因はまだわかっていません。この病気の代表的なものには全身性エリテマトーデス、関節リウマチ、慢性甲状腺炎などがありますが、肝臓(カンゾウ)に関係があるものには、「自己免疫性肝炎」があります。
圧倒的に女性に多い「自己免疫性肝炎」
「自己免疫性肝炎」は、性別で言ったら、圧倒的に若い女性、もしくは更年期の女性に多いのが特徴です。倦怠感(ケンタイカン)、黄疸(オウダン:身体にビリルビンが過剰にあることによって眼球や皮膚といった組織や体液が黄色く染まる状態)、食欲不振といった肝臓病特有の症状のほかに、関節痛、発疹(ホッシン)などが現れます。
この自己免疫性肝炎は、C型肝炎と深いかかわりがあると考えられています。と言いますのも、C型肝炎と自己免疫性肝炎の合併が、少なからず存在しているからです。この2つの病気がどうして合併するのかについては、まだハッキリとわかっていませんが、C型肝炎が自己免疫性肝炎を引き起こしているという説もあります。この2つの病気の治療には、相反する薬剤が使われるため、臨床的にはしばしば問題となります。
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- 【参考】「女性に多いもう一つの肝臓病」に関して
:「原発性胆汁性肝硬変」という病気も、自己免疫性肝炎と同様に、圧倒的に女性に多く、とくに40歳以降の女性に見られます。この原発性胆汁性肝硬変の症状として特徴的なのは皮膚の痒み(カユミ)です。この病気と診断された半数以上の人が、皮膚のかゆみを理由に受診しています。病気の発生原因はいまだよくわかっていませんが、肝臓内の細い胆管が炎症によって破壊され、胆汁(タンジュウ)の排泄(ハイセツ)が障害されます。自己免疫性肝炎と同様に、この病気もほかの自己免疫性疾患を合併することが多く、徐々に肝硬変(カンコウヘン)へと移行します。難病として指定されている病気の一つです。
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