慢性肝炎:肝細胞の破壊と修復が6か月以上にわたって絶え間なく続く■
- 肝臓病の種類と原因と治療法
慢性肝炎の特徴と原因
慢性肝炎は、急性肝炎が治りきらずに、肝細胞の破壊と修復が6か月以上にわたって絶え間なく続いている状態をいいます。肝臓病の中でいちばん多いのがこの慢性肝炎で、一部は「肝硬変(カンコウヘン)」へ進むことがあります。
そして、慢性肝炎の原因は、肝炎ウイルス、アルコール、薬剤、自己免疫性疾患などがありますが、肝炎ウイルスによって起こる場合がほとんどです。ただし、A型肝炎は慢性化しないので、慢性肝炎はB型肝炎ウイルスあるいはC型肝炎ウイルスに感染して起こるということになります。
成人して初めてB型肝炎に感染した場合は、慢性(急激な症状の変化ではなく、症状が長引く状態)にはなりません。したがって、B型肝炎から慢性になる患者さんは、ほとんどが母子感染によるHBキャリアです。C型肝炎では、急性肝炎の人の約6〜8割が慢性肝炎へ移行します。ウイルス性肝炎がなぜ慢性化するのか、詳しいことはいまだわかっていませんが、肝炎ウイルスに対する免疫(ウイルスや細菌などが体内に侵入した際に、排除して自分の身体を守ろうとする働き)反応の弱さが関係しているのではないかという考えもあります。
- 【参考】「母子感染(垂直感染)」とは:ご周知のとおり出産に出血はつきものなのですが、生まれる際に、赤ちゃんが通る産道で母親の血液に触れるごとによってウイルスに感染することを『母子感染』いと言います。感染者が親から子へと『タテ』に広がっていくことから、「垂直感染(スイチョクカンセン)」と呼ばれることもあります。
慢性肝炎の症状
慢性肝炎の患者さんによっては、体の倦怠感(ケンタイカン)や吐き気、食欲不振などの症状が見られることもありますが、一般的には、慢性肝炎の自覚症状はほとんどありません。したがって、慢性肝炎と診断された患者さんの大半は、検診などで偶然見つかったケースですね。とは言っても、慢性肝炎は、症状が一時的に悪化することもあります。これを「急性増悪」といいますが、この場合は急性肝炎のときと同じような症状が現れることがあります。
慢性肝炎の診断方法
慢性肝炎かどうかは、血液検査でわかります。肝臓(カンゾウ)の炎症の状態を知る一つの目安にGOT、GPTがありますが、この数値を経過観察し、6か月以上にわたって異常を示している場合に、慢性肝炎と診断されます。慢性肝炎は、「活動性慢性肝炎」と「非活動性慢性肝炎」に分けられます。一般的に、GPTの変動が激しいと活動性の可能性が大きいようです。このほか、診断を確実にするため、また炎症の状態を知るために、超音波検査(エコー検査)や肝生検が行われることもあります。
慢性肝炎の治療方法
慢性肝炎の治療は検査結果に応じて行われますが、肝機能が安定している場合は、特別な治療は必要ありません。最近では、インターフェロンを使った治療法が行われ、とくにC型慢性肝炎に効果がみられます。B型慢性肝炎の場合でも、インターフェロンによる治療が行われていますが、成績はあまりよくないのが実情です。
- 【参考】「アミノ酸配列によるインターフェロンの有効性予測」に関して:日本人に最も多い慢性C型肝炎は1b(U)形ですが、インターフェロン治療による治癒(チユ)の確率は、およそ20%しかありません。そのために、1b型においてどのような症例がインターフェロンに反応し、どのような症例が反応しないのかということが、実に様々な研究報告によって明らかにされてきました。
日本においては、東京医科歯科大学の榎本信幸先生が、C型肝炎ウイルスの遺伝子の一部であるNS5Aという領域に着目しました。そして、この領域を構成しているアミノ酸の配列を調べた結果、アミノ酸の変異の数が多いほどインターフェロンの効果があるということを発見されております。そして、1996年に、世界的にも有名な医学雑誌である『New England Journal of Medicine』に発表しました。この内容は非常に素晴らしい研究報告であり、NS5Aのアミノ酸を調べることによって、インターフェロン療法が効果的かどうかを予測する手段として、世界中の研究者や医療関係者から注目されております。今後、将来的な応用が臨床の現場から期待されております。
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