肝臓の働き:働き者の臓器である肝臓には多彩な機能「代謝・解毒・合成」
- 肝臓の仕組みと役割の特徴
肝臓の働き:働き者の臓器である肝臓には多彩な機能「代謝・解毒・合成」
肝臓は、生命活動を維持するためのさまざまな働きを行う人体にとって重要な臓器です。そのために、この肝臓が障害を起こして機能が停滞すると非常に大変なことになるのですが、肝細胞は比較的我慢強く、黙々と働き続けるのです。
肝細胞は代謝・解毒・合成など複雑に機能する『化学工場』
肝臓(カンゾウ)の働きのほとんどは肝細胞で行われますが、その肝細胞はよく『化学工場』に例えられ表現されます。その理由は、この肝細胞が、血液が運んできたさまざまな成分を、人体に役立つように合成したり、貯蔵したり、身体のあちこちに送り出したりしている機能を担っているからです。
この肝細胞は1列に並び、それぞれ両側は「類洞(ルイドウ)」と呼ばれる血液の通り道と接しています。肝細胞が工場なら、血液の流れはさしずめ『ベルトコンベア』と言ったところです。そして、工場、ようするに肝細胞の本来の機能がスムーズに行われるように、門脈(モンミャク)と肝動脈から大量の血液が肝臓に流れ込んできます。肝臓に血液が多いのはそのためで、肝細胞の中では、血液から材料となる物質を集めて、それらの材料を加工・処理して再び血液に送り返すという作業を行っているのです。肝細胞が果たしている機能は多種多様で複雑ですが、大きく分けると、体内に取り込んだ栄養素の『代謝(タイシャ)』、体にとって有害な物質の『解毒(ゲドク)』、胆汁(タンジュウ)の『合成』の3つが挙げられます。
数百種類の酵素が肝細胞の働きを助ける
肝細胞の働きで重要なのが「酵素(コウソ)」の存在です。この酵素は、肝細胞が行っている代謝(タイシャ)や解毒(ゲドク)といった作業を円滑に進めるのに欠かせない物質で、一つ一つの肝細胞は、それぞれ数百種類もの酵素を有しているのです。この肝細胞に含まれる酵素の中で最もポピュラー(有名)なのは、「GOT(グルタミン酸オキサロ酢酸トランスアミナーゼ)」と「GPT(グルタミン酸ピルビン酸トランスアミナーゼ)」です。どちらも、生体のアミノ酸の代謝(タイシャ)に重要な役割を果たしています。そのほか、「ALP(アルカリホスファターゼ)」や「γ−GTP(ガンマグルタミル・トランスペプチターゼ)」など、様々な酵素があります。何らかの原因で肝細胞に障害が起こると、肝細胞の中に含まれているこれらの酵素は、血液中に流出してしまいます。その血液中への流出のために、血液中の酵素の量を測ることによって、肝臓の働きが正常かどうかを知ることができます。この検査法は、肝機能検査にも利用されています。
肝臓は再生能力が高く、痛みが現れない「沈黙の臓器」
肝臓(カンゾウ)には、ほかの臓器には見られない優れた特徴があります。その優れた特徴とは、肝臓そのものの再生能力が高いということです。肝臓は、驚くべきことに、たとえその半分を切り取っても、残った細胞がどんどん増えて、数か月後には元の大きさにまで再生するという驚くべき力を持っています。肝臓には、痛みを感じる知覚神経が通っていませんので、少しくらい障害が起きても痛むことはまずありません。だから、肝臓にダメージを受けても弱音をはかず、壊れた部分は自分で治癒(チユ)しながら黙々と役割を果たし続けるのです。こうしたことから、肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれているのです。
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