肝臓の代謝機能:人体が必要とする物質を生成する
- 肝臓の仕組みと役割の特徴
肝臓の代謝機能:人体が必要とする物質を生成する
我々人間が生きていくためのエネルギーは、毎日の食生活からとり入れていますが、そこに肝臓が関与していることは意外と知られていないことですよね。栄養素が人の体のエネルギーとなっていくには、実は肝臓が大きな働きを果たしているということをここでは学習していきましょう。
食べ物の栄養分を加工・処理(代謝機能)し、体内へと送り出す
我々人間が口にする食物には、ご周知のとおりさまざまな栄養素が含まれているのですが、食物がそのままの形では、人間の身体では利用することができません。門脈(モンミャク:肝臓に向かう部分の門脈は特に『肝門脈』とも呼ばれ、消化管から吸収した栄養分を運ぶ補給路となる重要な血管)から肝臓(カンゾウ)に入った栄養分は、肝細胞の働きで、体の各部分が必要としている物質に作りかえられます。
肝臓のこうした働きを「代謝(タイシャ)」といい、肝臓は、糖質、たんぱく質、脂質など、何種類もの栄養素の代謝を行っています。作りかえられた物質は、体内の状態に応じて一時的に貯蔵されたり、血液中に送り出されたりします。
「糖質の代謝」:体の各組織にエネルギーを供給する
ご飯、パン、麺類、お菓子、果物(クダモノ)などに含まれる糖質は、腸でブドウ糖に分解された後に、腸管から吸収されて肝臓(カンゾウ)に運ばれていきます。そこでグリコーゲン(Glycogen)に作りかえられ、大部分はエネルギー源として利用されますが、一部は肝臓内に蓄えられます。そして、血糖(ケットウ)が低下したときなどに再びブドウ糖の形に作られ、必要量だけ血液中に放出されます。このように、肝臓は体の機能が円滑に働くために欠かせないエネルギーの供給と、血液中の糖分の調節という重要な働きをしています。
ちなみに、血液の中に溶け込んだブドウ糖を「血糖(ケットウ)」と呼びます。そして、その濃度を血糖値と呼んでいます。体内でのブドウ糖の運搬は、血液によって行われるのです。健康な状態では、血糖値は常に一定に調節されております。この調節を担っているのが、数種類のホルモンなのです。
例を挙げますと、血糖が低くなった場合には、グルカゴンやアドレナリン、コルチゾールなどといったホルモンが作用して、血液の中にブドウ糖を供給するように働きます。肝臓(カンゾウ)に蓄えられたグリコーゲンが再びブドウ糖に変わるように作用するのです。
- 【参考】「血糖値」とは:血糖値は、mg/dlの単位であらわされます。つまり、1dlの血液の中に何ミリグラムのブドウ糖が含まれているのかを示すのが血糖値ということです。
「たんぱく質の代謝」:アミノ酸をタンパク質に変える
肉や卵、大豆などから摂取されるタンパク質は、消化酵素によってアミノ酸に分解され、肝臓に達します。アミノ酸は、肝臓の一個一個の肝細胞で人間の体に合ったタンパク質に作りかえられます。この肝細胞では、肝細胞自身の組織蛋白(タンパク)も含め、さまざまな種類のたんぱく質が合成されますが、代表的なのは「アルブミン」と「血液凝固因子」です。
そして、アルブミンは、血管から水がしみ出すのを防ぐ働き、血液凝固因子は、出血したときに血を固める働きがありますが、肝臓病が進んでこれらが作られなくなると、腹水や浮腫み(ムクミ)が起こったり、血が固まりにくくなったりする症状が起こってきてしまいます。
「脂質の代謝」:脂質をコレステロールなどに合成する
食物中に含まれる脂質は、腸で「脂肪酸」と「グリセロール」に分解され、腸管から吸収されます。そして、門脈またはリンパ管を通って肝臓に運ばれ、ここでコレステロールやリン脂質、中性脂肪に合成されて、再び血中に放出されます。そして、その一部は、脂肪酸が分解されて、エネルギーとなることもあります。これに加え、炭水化物でも、エネルギーとして消費されない余分なものは、肝臓内で中性脂肪に変えられ、体内の脂肪組織に貯蔵されます。
≫次の記事「肝臓の解毒作用:人体にとって有害な物質を無害化して体外へ」へ
◆「肝臓の仕組みと役割」の関連記事一覧◆
・ 仕組み:@位置と形態 A仕組み:肝細胞
・ 役割・機能:@働き「代謝・解毒・合成」
A代謝機能 B解毒作用 C胆汁の合成
◆「肝臓病の種類」のお勧め記事一覧◆
・ウイルス性肝炎 ≫ 主な原因
[1]急性肝炎 [2]慢性肝炎 [3]劇症肝炎
各肝炎の特徴@A型 AB型 BC型 CD型E型
・肝硬変 ・脂肪肝 ・肝ガン ・薬物性肝障害
・アルコール性肝障害
@ アルコール性脂肪肝 A アルコール性肝線維症
B アルコール性肝炎 C アルコール性肝硬変
・自己免疫性肝障害
@ 自己免疫性肝炎 A 原発性胆汁性肝硬変
|