肝臓の解毒作用:人体にとって有害な物質を無害化して体外へ
- 肝臓の仕組みと役割の特徴
肝臓の解毒作用:人体にとって有害な物質を無害化して体外へ
我々人間の体の中には、栄養となる食物以外にも、バイ菌やウイルスなど色々なものが入ってきます。これに加え、体内でも、食物や不要物を分解する過程で、さまざまな物質が発生しています。肝臓では、それらを異物とみなして、すみやかに処理する作業が行われているのです。
アルコールや薬剤を分解・処理して無害化する
お酒などのアルコールや食品添加物は当然のことながら、病気を治すための薬剤でさえ、人間の体にとっては異物なのです。肝臓(カンゾウ)は、こうした有害な物質を分解・処理して、人体にとって無害なものに変えて体外へ排出する働きをしているのです。
例を挙げますと、アルコールの場合、一部は吐く息や尿の中に排泄(ハイセツ)されるのですが、そのほとんどは肝細胞で処理されます。その処理の方法には2通りあって、大部分のアルコールはアルコール脱水素酵素によって処理されますが、アルコールの摂取量が多くなると、肝細胞の中にあるMEOS(メオス)と呼ばれるアルコール処理システムで処理されます。これらアルコール脱水素酵素やメオスの働きで、アルコールはアセトアルデヒドという毒性のある物質に変えられますが、すぐにアセトアルデヒド脱水素酵素の働きで酢酸(サクサン)に変えられます。そして、そのままの形、あるいは炭酸ガスと水に分解されて、血液中に排泄(ハイセツ)されていくのです。このように、肝臓による解毒(ゲドク)の処理のおかげで、酒を飲んでも、また元通りになるのです。睡眠薬を飲んで翌朝目が覚めるのも、肝臓が薬を分解して効力を無くしてしまうからなのです。
体内で発生した有害物を無害なものに作りかえる
肝臓(カンゾウ)は、体外から入ってくる有害な物質だけでなく、体内で発生した有害物も無害なものに処理しています。例を挙げますと、アンモニアは、腸内で食物が消化・吸収されるときや、アミノ酸が分解されるときに自然に発生する物質なのですが、そのままだと脳に作用して悪影響を及ぼすために、肝細胞はアンモニアを尿素(ニョウソ)という無害なものに変えてしまいます。そして、「肝硬変(カンコウヘン)」などで肝臓に障害が起こると、肝細胞の働きは低下してアンモニアが処理されなくなり、その結果として、解毒(ゲドク)されないアンモニアは脳に達し、脳の働きに障害を起こしてしまいます(これを「肝性脳症(カンセイノウショウ)」と言います)。こうしたことに加えて、肝細胞は、赤血球が古くなって壊されるときに生じるビリルビンの処理にも関わっています。ビリルビンは水に溶けない物質ですが、酵素の働きで水に溶けやすい形に変えられ、排泄(ハイセツ)されます。
細菌を取り込んで処理する「クッパー細胞」
肝細胞以外にも、肝臓(カンゾウ)には有害物質を処理する役目を果たしている細胞があります。それは、類洞壁(ルイドウヘキ)を形作っている「クッパー細胞」と呼ばれる細胞です。大腸にはさまざまな種類の細菌が存在しますが、大腸の壁を作っている粘膜細胞によって、血液中に細菌や細菌の出す毒素が侵入しないように守られています。しかしながら、ときどき粘膜細胞だけでは防ぎきれずに血液中に入ってしまうこともあるのです。そして、このクッパー細胞は、その細菌を取り込んで消化する重要な働きをしているのです。
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