肝硬変(カンコウヘン)の症状の詳細
- 肝臓病の種類と原因と治療法
@手のひらが赤くなる(手掌紅斑)
A皮膚にクモ状の血管が浮き出る(クモ状血管腫)
B腹部の静脈が浮き出る
C男性の乳腺がふくらむ
D黄疸(オウダン)が現れる
E出血しやすくなる
肝細胞の働きが低下すると、そこで作られる血液凝固因子の量が減少するため、出血傾向がみられるようになります。ちょっとしたことで出血する、少々の傷なのに血が止まらない、よく鼻血が出る、といったような症状は、肝臓病が進んでいる一つのサインとみなければなりません。
F肝臓、脾臓(ヒゾウ)の腫大
肝硬変では、半数以上の人に肝臓の腫れ(肝腫大)がみられ、診察すると硬く触れることができます。また、肋骨(ロッコツ)の下にある牌臓が、腫れて大きくなる(脾腫大)こともあります。脾臓が腫れるのは、肝硬変のために脾臓から肝臓への血液の流れがスムーズにいかなくなり、脾臓にうっ血が起こるためと考えられています。脾臓に腫れがあると、血液中の血球成分や血小板(出血が起こった際に固まり、血管の破れた部分を塞いで出血を止める機能をする)が脾臓で多量に破壊されるため、貧血(ヒンケツ)になったり血小板が減少したりするようになります。
G腹水(フクスイ)が溜まる
人間の体の中には相当量の水分があり、なかでも血液中に最も多く含まれています。この血液中の水分は、アルブミンという成分によって血管から染み出ないように保たれていますが、肝硬変が進行して肝臓でのアルブミン産生量が減少すると、血液中の水分は徐々に外へしみ出してきます。しみ出た水分は、体の下の部分にたまり、最初は足に浮腫み(ムクミ)となって現れます。さらにアルブミンの量が減ってくると、血液中の水分は体内のいろいろな部分にたまるようになります。いちばんたまりやすいのが腹腔内で、腹水というのは、そこに水がたまった状態のことです。腹水は200〜300ミリリットルぐらいたまっても、本人に自覚症状はあまりありません。しかし、腹部超音波検査では、100ミリリットル程度の腹水でも発見することができます。
H吐血、下血が起こる
肝臓内の血液の流れが悪くなると、胃や食道の静脈がうっ血して静脈瘤(ジョウミャクリュウ)ができます。肝臓には、胃や腸からの血液を集めて肝臓に運ぶ門脈(モンミャク:肝臓に向かう門脈は特に『肝門脈』とも呼ばれ、消化管から吸収した栄養分を運ぶ補給路となる重要な血管)がありますが、肝硬変になって肝臓が硬くなると血液の流れが悪くなり、門脈内の血圧が上昇します(門脈圧充進)。こうなると血液は、肝臓に入っていけないため、どこか別のルートから心臓に戻らなければなりませんが、これには食道や胃の静脈、直腸の静脈など、いくつかのルートがあります。
ただし、これらの血管は細く、大量の血液が通るには無理があるため、静脈が太くふくらみ、コブのようなものができます。これが静脈瘤で、食道にできたものは「食道静脈瘤」と呼ばれます。食道静脈瘤が破裂して出血を起こすと、吐血、下血(まっ黒な便が出る)といった症状が現れます。消化管出血は大量出血になりやすく、命を落とすケースもあります。
I肝性脳症(カンセイノウショウ)を起こす
肝性脳症は肝臓病のときにみられる意識障害のことで、「肝性昏睡(カンセイコンスイ)」とも言います。食道静脈癌とともに、肝硬変の重要な症状です。肝性脳症は、肝臓の解毒(ゲドク)機能の低下によって、血液中にアンモニアなどの有害物質が増え、それが脳に作用して起こるものです。肝性脳症の症状は、初期段階のうちは他人にも見分けがつかない程度の軽い症状しか現れません。
しかしながら、病気が進行するにつれて、奇異な行動が目立つ、性格が変わる、簡単な計算ができない、などの特徴的症状が現れます。「羽ばたき振戦」といって、手を水平に上げ、鳥が羽ばたくように手をふるわせる独特なしぐさも、この段階に見られます。そして、さらに進行すると、興奮して大声をあげたり、何か刺激を与えていないとすぐに眠りこんだりします。最終的には完全な昏睡状態に陥り、外からの刺激にまったく反応しなくなります。
◆昏睡度の分類◆
昏睡度T度
- 睡眠リズムの乱れ(昼と夜のとり違え)
- 情緒不安定
- わずかな性格の変化
- 生活がだらしなくなる
昏睡度U度
- 人の名前や場所がわかららなくなる
- 物をとり違える
- 性格の変化がハッキリ目立ってくる
- 異常な行動が多くなる
- ときに眠りがちの状態になるが、呼びかけると目を開いて会話ができる
昏睡度V度
- しばしば興奮状態になったり、反抗的な態度をみせる
- 強い不安や恐怖を示す
- ほとんど眠っているが、刺激を与えると目を覚ます
昏睡度W度
昏睡度X度
- 深い昏睡状態
- 外からの痛みや刺激にまったく反応しない
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