肝硬変の診断・治療法
- 肝臓病の種類と原因と治療法
肝硬変の診断方法
肝硬変(カンコウヘン)は、手掌紅斑(シュショウコウハン)、クモ状血管腫など、比較的特有の身体症状が現れます。これらの肝硬変の症状がみられ、かつ腹部の触診で肝臓(カンゾウ)が硬くなっていると判明すれば、肝硬変が疑われます。診断をより確実にするために、血液検査や画像診断が行われます。
しかしながら、肝臓の炎症の程度を反映するGOTやGPTより、肝臓(カンゾウ)の働き具合を反映するビリルビンやアルブミン、プロトロンビン時間のほうがどちらかと言えば比較的重要です。つまり、肝硬変を起こしているとビリルビンが増え、アルブミンは低下し、プロトロンビン時間は延長します。
そして、画像診断では、超音波検査(エコー検査)を行えば、肝臓の表面のデコボコや辺縁が丸くなる所見(これを「鈍化」と言います)、脾臓(ヒゾウ)の腫大などから診断がつきます。肝硬変の進行の程度をさらに詳しく知りたい場合は、ときに腹腔鏡検査や肝生検が行われることもあります。
肝硬変の治療方法
身体の機能に支障がない「代償期」では、安静と食事の両方が治療の基本になります。それ以外には、定期的に検査を受ける以外、特別な治療は行われないのが一般的です。肝硬変の「非代償期」においては、症状の悪化や合併症の防止が治療の基本となります。肝硬変の特効薬はまだありませんが、腹水、食道静脈瘤(ショクドウ・ジョウミャクリュウ)の破裂による消化管出血、肝性脳症(カンセイノウショウ)などの治療法の進歩により、肝硬変と診断されても、長生きできる患者さんが多くなっています。
@腹水の治療
アルコールの飲みすぎによる「腹水(フクスイ)」の場合は、まずアルコールの摂取を中止することです。禁酒するだけで、腹水が改善されることがよくあります。そして、肝臓(カンゾウ)の負担を減らすため、ある程度の安静も必要です。また、腹水には塩分のとりすぎが深く関係しているので、厳重な塩分制限が必要です。1日当たりの摂取量を3〜5グラム以下に減らし、水分の量も1日1リットル以下に抑えるようにします。こうした基本的な治療のほかに、利尿剤を用いて尿量を増やしたり、アルブミンを点滴で補給します。
A食道静脈瘤の治療
静脈瘤ができても、痛みや異物感などの自覚症状はほとんどないので、内視鏡で定期的に経過観察することが必要です。破裂の危険がなければ、そのまま観察を続けます。食道静脈瘤に破裂の危険が出てきた場合、治療法として従来は手術療法が一般的でしたが、最近は内視鏡による「硬化療法」がよく行われています。この「硬化療法」とは、静脈瘤(ジョウミャクリュウ)そのもの、またはその周りを硬化剤で固めてしまうもので、破裂して出血を起こした場合でも高い効果を上げています。これに加え、最近では、静脈瘤を輪ゴムでしばる「静脈瘤結紮術(ジョウミャクリュウ・ケッサツジュツ)」も開発され、食道静脈瘤の治療によく用いられるようになりました。
B肝性脳症の治療
「肝性脳症(カンセイノウショウ)」を起こすアンモニアなどの有害物質は、主として腸管で作られます。したがって、この治療はまず便秘(ベンピ)を治すことで、有害物質を長時間にわたって体内にとどめないようにします。治療薬として最近よく使われるのは、ラクツロースという緩下剤です。このラクツロースには、排便を促す効果があるのはもちろん、腸内の有毒な細菌の繁殖を抑えたり、アンモニアの吸収を低下させる作用があります。また、血液中のアミノ酸バランスの乱れが肝性脳症の一因となっていることから、特殊アミノ酸製剤を点滴することもあります。そのほか、アンモニアのもとになるタンパク質の制限が必要です。
- 【参考】「腹水や静脈瘤に有効な治療法」について:難治性の腹水(フクスイ)や食道静脈瘤の場合、数年前に開発された門脈(モンミャク:肝臓に向かう門脈は特に『肝門脈』とも呼ばれ、消化管から吸収した栄養分を運ぶ補給路となる重要な血管)の圧力を静脈系に逃がす治療法が行われます。頸部の静脈からカテーテルを肝臓内の静脈に入れ、さらに針を入れて肝臓(カンゾウ)の内部で門脈に穿刺(センシ)し、金属の管状態のもの(ステント)を留置して、門脈と静脈の交通を人工的に作るのです。この治療方法は、「経頸静脈的門脈静脈短絡術(TIPS)」と呼ばれ、難治性の腹水(フクスイ)と静脈瘤の治療に有効な方法として、近年において、世界で数多く行われております。
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